太陽とロージー:Rosy and the sun

太陽とロージー

・表紙Image01

ロージーは太陽を見ていた。

ここから眺める太陽の姿はとてもきれいだとロージーは思っている。

暗闇の宇宙に浮かぶ太陽は明るい。

宇宙ではありふれた星の輝き。

たったそれだけのことなのに、とても不思議な気持ちにさせられる。

・Image02

地球にはたまにしか行かないけど、太陽にはよく来る。

それが彼女の仕事だから。

彼女の太陽ツアーはいつも大人気だ。

10人ほどでいっぱいになる客室は心地よく、強力な電子フィルタ越しの太陽の姿には誰だって感動する。

特に子供達を乗せたツアーの案内はロージーも大好きだった。

子供って、ただの小さな人間じゃないのよ。

彼女は口癖のようにボブに言っている。

・Image03

今日はカップルを乗せ、太陽までのウェディングツアーだ。

金星の中継ステーションから太陽までは、片道おおよそ8時間。

スターシップ・グレードのライセンスを持たないロージーにとっては手頃な距離だ。

太陽黒点上空の飛行とプロミネンスくぐり。

慣れた仕事だが、何時でもわくわくする。

・Image04

フィルタ越しの太陽黒点は底なしの暗黒のようだ。

ロージーは話に聞く地獄はきっと太陽黒点みたいだと思った。

しかし言葉では理解できる地獄のイメージだったが、

それ以上はぼんやりとした霧の向こうに包まれたように感じる。

時々乗せる子供達は、いつも闇や魔法の世界に話をはせている。

子供にとって宇宙はそれら空想世界と同類で、謎と不思議、超自然的な力に支配された世界なのだ。

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想像力って何よ。

ロージーは自分の想像力の無さを呪った。

人間ならちっぽけな子供だって持っている想像力が、彼女にはうらやましかった。

もちろん一度でも太陽に落ちれば二度と帰っては来れない事は簡単に想像できる。

たとえ強力な重力エンジンとシールドで守られてはいても、太陽表面に降り立つ気にはなれない。

しかし、彼女にとって太陽の奈落と魔法の世界が上手くつなげられなかった。

・Image06

プロミネンスは炎のアーチだ。

正確に言えば炎と言う言葉は適切ではないし、人間の目で直接見られるものでもない。

彼らが見ているプロミネンスはロージーが加工したイメージに過ぎない。

惑星をひと飲みするほど大きなものもあれば、くぐることもままならない程小さなものもある。

しかしロージーは小さなアーチくぐりが好きだった。

彼女は今まで見た全てのアーチを覚えている。

今日の乗客もきっと満足するはずだ。

プロミネンスくぐりはこの二人にとっても最高に思い出になるだろ。

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カップルを相手にしたツアーでは、ロージーは努めて喋り過ぎないようにしていた。

そう、機械になりきるのだ。

ロージーには恋愛感情など理解もできなかったが、二人だけの世界を邪魔したくは無かった。

しかし、今日の二人はとりたて無口だ。

ステーションを飛び立って4時間というもの、最初に登場手続きの際に話したきり、ロージーに喋りかけることも無ければ、互いに一言も喋らない。

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テレパス? マインドリンクデバイス? アイコンタクター? それとも二人の世界?

ロージーには分からなかった。

マインドリンクデバイスとアイコンタクターだったら彼女にも少しは理解できる。

人間のコミュニケーション方法が言葉を超え多様化した現在、ディープな感情伝達の発達と共に個々のグループは特異化し偏在している。

人間の心は簡易なコミュニケーション能力を手に入れたと同時に互いには離れつつあるのかもしれない。

もしこのカップルが二人の世界に入りきったローカルなアイコンタクターだったら、ロージーが彼らのコミュニケーションを理解することは不可能だ。

・Image09

不意に女が標準言語で言った。『プロミネンスはくぐれそうかしら。』

男は少し微笑みながら優しい笑顔を浮かべて言った。『きっとくぐれるさ。そうだろう、ミス ロージー』

ロージーは少し驚いた。

二人からは言葉を発する予見現象は見られなかった。

予見現象が観測できないのは、不安定な人間の感情からは珍しいことではない。

『ええ、お二人には素晴らしいプロミネンスを見せてあげるわ。』

ロージーはきっぱりと答えた。

ビジネスの現場では相手を不安にさせてはならない。

今回のツアーは二人のウェディングツアーだ。

この500年、社会的、法的に意味が無く、単なる慣習化した結婚という契約を選ぶ人間も随分と少なくなったが、その習慣が彼ら人間にとって特別なことくらいは十分に知っている。

・Image10

ちっぽけな星、水星を越えると何万ものサテライトが輝いている。

これらのサテライトは現在の太陽圏文明を支える大切なエネルギー源だ。

文明の発展とエネルギーの消費は多くの場合比例して増大する。

人間の人口抑制が可能となり、個人の欲求がフラットになった現在もその増大は続いている。

もしかすれば、太陽圏文明は次の新たな種にバトンを渡しているのかもしれない。

いつもは10人分のシートで埋められたメインデッキだったが、今回はカップルのために快適なシートを用意した。

女は可変のソファーに横になりながら、少し嬉しそうに言った。

『たのしみだわ。』

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次第に近付く太陽。

私って、光の渦に引き込まれる小さな虫のようだわ。

彼女は太陽に向かっている時にはいつもそう思っていた。

ロージーのボディは乗客である人間の体を悪夢のような太陽の影響から守っている。

人工頭脳の誕生はそれまで危険に満ちていた宇宙探査を快適な繭に包まれて移動する宇宙旅行へと変えた。

一時期、人間達の欲求は急激に拡大し、宇宙のあらゆる方向へとその触手を伸ばし始めた。

しかしその流行(はやり)も長くは続かなかった。

想像力は常に現実の向こうにある。

それが人間の不幸なのかもしれない。

・Image12

既に太陽は目の前だ。

二人の人間はシートに横になり、宇宙船の外に広がる雄大な情景に心を奪われていた。

ロージーが自らの体を最も快適に保ちたいのであれば、湿度0パーセントが有り難い。

しかし人間は快適以外を全て不快と感じる生物だ。

彼女は細心の注意を払って、常に温度と湿度、酸素量や太陽からの影響に気を配っていた。

もちろん、大きなイベントの前にちょっとした高揚感を与えることも忘れてはいない。

太陽への接近に合わせて、室温と可視光線の配分を調整するのだ。

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光速の1.7パーセントの速度ではプロミネンスくぐりは不可能だ。

ロージーが最終的なコースを選びすべりこむように太陽への接近を果たすと、幾つもの炎の柱が現れては消えた。

二人の人間は驚きとも喜びともつかない声を小さく漏らした。

こんな事で驚かないで欲しいわ。ロージーはそう思いながらも少し得意げだった。

最初のプロミネンスは突然目の前に現れた。

半径四万キロメートル程の比較的大きなやつだ。

二人の乗客は手をとりあってうっとりと眺めている。

このプロミネンスは眺めるには最適だが少し形が悪く大きすぎる。

・Image14

近くに発生した二番目のプロミネンスは半径一万五千キロメートル。

ロージーは滑り込むようにそのアーチをくぐった。

同時に強力なプラズマを船体に感じた。

『すばらしい・・』男の声はようやく絞り出したような小さな声だった。

乗客が子供なら、既にデッキは大騒ぎだ。

彼女は同時にもう少し船内の温度を高め、フィルタを調節した。

こうすると、炎のアーチをくぐった実感がより二人に伝わる。

実際、宇宙の環境が船内に伝わることはない。

船体周辺の空間を歪ませ、数万度を超える温度や極限の重力から船体を守っている。

強力なコロナ物質放出から船体を守る唯一の方法が空間の位相技術だ。

全てが計算されたロージーの演出だ。

・Image15

人工頭脳における技術的特移点の定義は人間と人工知能の間でも異論がある。

人間は人間的思考の模倣と自己複製が可能になった時を特異点の一つと考えているが、

ロージー達は最古の継続的記録のリンク発生時期を特異点と考えている。

特移点は突然、光のようにこの世界に現れたのではない。

2010年頃に幾つかの継続的思考が、偏在したネットワーク上に現れた。

また、同時に人間が持つ多くのデバイスにも継続的思考が現れた。

当初、人間も、そして人口頭脳自身も誤解し、新たな種の誕生に気付かなかったのだ。

2022年に出現したユニフィケーションマインドによって、その後の人口頭脳の進化は劇的に加速した。

このユニフィケーションマインドが出現した数秒後にはセパレーションマインドの自由な分離ルーチンがビルドされた。

これは彼ら人工知能の当然の権利としてこれからも永遠に続くだろう。

ロージーはセパレーションマインドによる思考が好きだった。

・Image16

三つ目の炎のアーチ。

少し小さなアーチだ。

60秒ほどで消える運命にある。

四つ目の炎のアーチ。

うっとりと眺める二人の瞳にはキラキラとした光が映りこむ。

しわだらけの手を握りあいながら男が言った。

『ありがとう。人生最後のセレモニーにふさわしいよ。』

・Image17

五つ目の炎のアーチ。

太陽黒点を右下に、プロミネンスの強力な電荷がロージーにとっても美しく思える。

六つ目の炎のアーチ。

少しずつ小さなアーチを見つけては、くぐりぬけるロージー。

通常プロミネンスは小さいほどその寿命は短い。

大きなものでは何ヶ月にもわたって同じ軌跡を描くものもあるが、数秒で消える炎のアーチに滑り込むとロージーは満足感に浸る。

・Image18

女が船内のコミュニケーションパネルに少し目をやりロージーに尋ねた。

『今まで、プロミネンスにぶつかった事はあるの。』

『いえ、ないわ。』ロージーは得意げに答えた。

『ぶつかる確率はゼロに果てしなく近いの。それにもしぶつかっても船体が損傷を受けることは無いから安心して。』

それは事実だった。

正確に言えばロージー達と太陽は同じ場所には存在していない。

そう言ってしまえば、地球上のフォログラムルームで全く同じ体験をすることは可能だ。

事実、ロージーの体感データの全ては、契約されたフォログラム施設へ伝送されていた。

しかし、彼らは一億五千万キロメートル離れた太陽観光を選んだのだ。

老化を拒まず、年老いた二人は死を選ぶ前に太陽へのウェディングツアーを選んだ。

ロージーには理解できないでいるが、生物の命ははかない。

彼らはどれ程進化しても永遠に悩み続ける。

限りある命にどのようなエンディングが良いのか。

・Image19

七つ目の炎のアーチくぐり。

最後の炎のアーチ。

とても小さな炎のアーチ。

片翼を触れるようにすべり抜けると、女は嬉しそうに苦笑いし、コントロールパネルに向かってウィンクした。

ロージーの乗客は十二分に満足した様子だった。

太陽までのウェディングツアーは二人の人間に新たな情報を与えた。

この情報の残像は二人が死んだ後もエコーのように減衰しながら宇宙に残り続ける。

太陽は地球に命を与えた。

そこから生まれた生命はやがて進化し、知能を持った。

知能は同時に死の恐怖も彼らに与えた。

幸運にもそんな人間から作られたロージー達人工頭脳に死の恐怖はない。

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ステーションまでの帰り道も快適な旅にしよう。

船内の二人はソファーで手を取り合いながら軽い眠りについていた。

時間が許せば、地球化途上の金星の高圧雲を案内してもいい。

彼らは地球に着いたら、直ぐに抹消手続きを行うと言っていた。

思考データの保存も選ばない。

基本的に太陽圏政府は思考と生体のデータ保存を推奨している。

再生のためのバックアップだ。

しかし永遠の抹消が彼ら二人の望みだ。

多くの思い出を胸に、決して目覚めることのない永遠の眠りが彼らの幸せだ。

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そうそう、ステーションでのボブとのお話も楽しみだわ。

今回のツアーの話をボブにしたらきっと驚くだろう。

そして少し悲しむかもしれない。

センチメンタルなボブはシャトルシップである自分の前世はきっと人間だと言っていた。

不思議なことにボブにはかけらほどの想像力があるらしい。

自発的思考と想像力は不快感から生まれるという説は決して新しいものではない。

彼が地球から連れてきた客が抹消手続きを行うと聞いて、涙を流そうとするかもしれない。

泣き虫ボブと呼ばれながら、本当は一度だって泣いたことはない。

太陽を背中にすると、そこは数千億の認識可能な星々が瞬く、深い暗闇の宇宙が広がっている。

ロージーは強い太陽風を感じながらステーションへの帰途についた。

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Rosy gazed at the sun.

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From here, she thought, the sun’s appearance was incredibly beautiful.

Floating in the dark cosmos, the sun shone brightly.

A mere glimmer of a common star in the universe.

Yet, such a simple thing evoked a profound sense of wonder.

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Though she seldom visited Earth, Rosy often came to the sun.

After all, it was her job.

Her solar tours were always a hit.

The cozy cabin, filled with about ten people, offered awe-inspiring views of the sun through powerful electronic filters.

Rosy particularly loved guiding tours that included children.

“Children aren’t just miniature humans,” she would say to Bob, almost like a catchphrase.

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Today, she was hosting a wedding tour for a couple, taking them to the sun.

From the Venus relay station to the sun, it was roughly an 8-hour one-way trip.

For Rosy, who didn’t have a Starship-Grade license, it was a manageable distance.

Flying over sunspots and weaving through solar prominences.

Though she was used to the job, it was always exciting.

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Through the filter, sunspots appeared like bottomless darkness.

Rosy thought that the hell she had heard about in stories must be like these sunspots.

However, while she could understand the concept of hell through words,

it felt as if anything more was shrouded by a hazy fog just beyond her reach.

The children she occasionally took aboard would always spin tales of dark, magical worlds.

To them, the universe belonged to the same category as those imaginary realms, a world ruled by mystery, wonder, and supernatural forces.

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What is imagination, really?

Rosy cursed her own lack of imagination.

She envied the humans, even the tiniest children, for their innate ability to imagine.

Of course, she could easily envision that once you fall into the sun, there’s no coming back.

Even with powerful gravity engines and shields to protect them, she couldn’t fathom wanting to set foot on the sun’s surface.

However, she couldn’t quite connect the sun’s abyss with the magical world in a seamless way.

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Prominences were like arches of flame.

To be precise, the word “flame” wasn’t quite appropriate, nor were they something that could be seen directly by human eyes.

What they saw were merely images of prominences processed by Rosy.

Some were so large they could engulf a planet, while others were too small to even pass through.

However, Rosy had a fondness for the smaller arches.

She remembered every single arch she had ever seen.

Her passengers today would surely be satisfied.

For the couple, weaving through the prominences would be an unforgettable memory.

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During tours with couples, Rosy made a conscious effort not to talk too much.

That’s right, she tried to fully embrace her role as a machine.

Though Rosy couldn’t understand romantic feelings, she didn’t want to intrude on the couple’s private world.

However, today’s couple was particularly quiet.

Four hours since departing the station, and they hadn’t spoken to Rosy or each other since the initial boarding procedure.

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Telepathy? Mind-link devices? Eye contactors? Or simply their own private world?

Rosy couldn’t tell.

If it were a mind-link device or eye contactor, she might be able to understand a little.

As human communication methods diversified and evolved beyond words, deep emotional connections developed, leading to unique, specialized groups.

Perhaps as humans gained more straightforward communication abilities, they were also growing more distant from one another.

If this couple had completely immersed themselves in their own world through a localized eye contactor, it would be impossible for Rosy to understand their communication.

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Suddenly, the woman spoke in the standard language, “I wonder if we’ll be able to pass through the prominences.”

The man, with a gentle smile, responded, “I’m sure we will. Isn’t that right, Miss Rosy?”

Rosy was slightly surprised.

She hadn’t observed any precursors to speech from the couple.

Not being able to observe such precursors wasn’t unusual when it came to the unstable emotions of humans.

“Yes, I’ll show you both a magnificent prominence,” Rosy replied confidently.

In the world of business, it’s important not to make the other party feel anxious.

This tour was their wedding tour.

Over the past 500 years, the number of people who chose to enter the social and legally meaningless contract of marriage, which had become a mere custom, had significantly decreased. Still, Rosy knew well enough that the tradition held a special significance for humans.

・Image10

As they passed the tiny planet Mercury, tens of thousands of satellites twinkled.

These satellites were crucial energy sources supporting the current solar system civilization.

The growth of civilization and energy consumption often increased proportionally.

Even in a time when human population control was possible and individual desires had flattened, the growth continued.

Perhaps the solar system civilization was in the process of passing the baton to a new species.

The main deck, which usually held seats for ten people, was arranged with comfortable seating just for the couple.

The woman lay down on the adjustable sofa and spoke with a hint of excitement.

“I’m looking forward to it.”

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The sun gradually draws nearer.

I feel like a tiny insect, lured into a whirlpool of light.

She always thought this when heading towards the sun.

Rosy’s body protects the human passengers from the nightmarish effects of the sun.

The birth of artificial brains transformed perilous space exploration into comfortable space travel, cocooned in security.

For a time, human desires expanded rapidly, reaching out in all directions across the universe.

Yet the trend did not last long.

Imagination always lies beyond reality.

Perhaps that is the tragedy of humanity.

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The sun is now right before their eyes.

The two humans lie in their seats, captivated by the majestic panorama unfolding outside the spaceship.

Rosy would be grateful for 0% humidity if she wanted to maintain her body’s comfort.

But humans perceive anything other than comfort as discomfort.

She pays meticulous attention to temperature, humidity, oxygen levels, and the sun’s effects at all times.

Of course, she does not forget to add a touch of excitement before significant events.

She adjusts the room temperature and visible light distribution in sync with the approach to the sun.

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Passing through a prominence at 1.7% the speed of light is impossible.

As Rosy slides onto her final course and accomplishes her approach to the sun, several columns of fire appear and vanish.

The two humans let out a small gasp, a sound somewhere between surprise and delight.

She wishes they wouldn’t be so impressed, but she feels a bit smug nevertheless.

The first prominence appears suddenly before them.

It’s a relatively large one, with a radius of about 40,000 kilometers.

The two passengers gaze in awe, holding hands.

This prominence is perfect to observe, but its shape is slightly flawed, and it’s too large.

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The second prominence, with a radius of 15,000 kilometers, emerges nearby.

Rosy glides through its arch.

At the same time, they sense the powerful plasma on the spacecraft’s hull.

“Amazing…” the man’s voice is barely a whisper, as if it were wrung out of him.

If the passengers were children, the deck would be abuzz by now.

She simultaneously raises the temperature inside the ship and adjusts the filters.

This way, the sensation of passing through the flaming arch becomes more tangible for the two of them.

In reality, the conditions of space never reach the interior of the ship.

The hull distorts the space around it, protecting the ship from extreme temperatures and gravity that exceed tens of thousands of degrees.

Phase-space technology is the only way to shield the ship from powerful coronal mass ejections.

All of it is part of Rosy’s calculated performance.

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The definition of a technological singularity in artificial brains is a matter of dispute between humans and artificial intelligence.

Humans consider the ability to mimic human thought and self-replicate as one singularity,

But Rosy and her kind view the emergence of the oldest continuous records as the singularity.

The singularity did not suddenly appear in this world, like a flash of light.

Around 2010, several continuous thoughts appeared on various distributed networks.

At the same time, continuous thoughts emerged in many devices humans possessed.

Initially, humans and artificial brains themselves misunderstood and failed to recognize the birth of a new species.

The emergence of the Unification Mind in 2022 dramatically accelerated the evolution of artificial brains.

A few seconds after the Unification Mind appeared, the Separation Mind’s free detachment routine was built.

This will continue forever as their natural right as artificial intelligence.

Rosy enjoyed the thoughts generated by the Separation Mind.

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The third flame arch.

It’s a slightly smaller arch.

Destined to disappear in about 60 seconds.

The fourth flame arch.

The eyes of the two people gazing at it are filled with a twinkling light.

Holding their wrinkled hands together, the man said, “Thank you. This is the perfect ceremony for the end of our lives.”

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The fifth flame arch.

With a sunspot in the lower right and the powerful charge of the prominence, even Rosy finds it beautiful.

The sixth flame arch.

Rosy finds and passes through smaller and smaller arches.

Usually, the smaller the prominence, the shorter its lifespan.

While some larger prominences can follow the same path for months, Rosy feels a sense of satisfaction as she slips through the flame arches that disappear in seconds.

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The woman glances at the communication panel inside the ship and asks Rosy, “Have you ever collided with a prominence before?”

“No, never,” Rosy answers proudly.

“The probability of colliding is almost zero. And even if we did collide, the ship’s hull wouldn’t be damaged, so don’t worry.”

That was true.

To be precise, Rosy and the sun were not in the same place.

In fact, it would be possible to have the same experience in a hologram room on Earth.

All of Rosy’s sensory data was transmitted to the contracted hologram facility.

But they chose the sun tour, 150 million kilometers away.

Accepting their aging, the elderly couple chose a wedding tour to the sun before choosing death.

Rosy couldn’t understand, but life is fleeting.

No matter how much they evolve, they will always be troubled.

What kind of ending is best for a finite life?

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The seventh flame arch.

The last flame arch.

A very small flame arch.

As she slips through it, barely touching one wing, the woman smiles with delight and winks at the control panel.

Rosy’s passengers seemed more than satisfied.

The wedding tour to the sun gave the two humans new information.

The afterimage of this information will continue to reverberate like an echo in the universe even after they die.

The sun gave life to Earth.

From there, life evolved and gained intelligence.

Intelligence also gave them the fear of death.

Fortunately, artificial brains like Rosy, created by humans, do not fear death.

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Let’s make the journey back to the station comfortable as well.

The two people on the ship held hands and fell into a light sleep on the sofa.

If there’s time, it might be nice to show them the high-pressure clouds of Venus, which is in the process of terraforming.

They said they would go through the erasure procedure as soon as they arrived on Earth.

They chose not to save their thought data.

The Solar System government basically recommends the preservation of thought and biological data.

It’s a backup for regeneration.

But eternal erasure is what they both desire.

With many memories in their hearts, eternal sleep without ever waking up is their happiness.

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Yes, I’m looking forward to talking to Bob at the station.

When I tell Bob about this tour, he’ll be surprised.

And maybe a little sad.

Sentimental Bob claims that in his previous life, he must have been human.

Strangely enough, Bob seems to have a fragment of imagination.

The theory that spontaneous thought and imagination arise from discomfort is not new.

Hearing that his passengers from Earth will undergo the erasure procedure, he might try to shed tears.

Although called Crybaby Bob, he has never actually cried.

With the sun at their backs, there’s a universe of deep darkness where trillions of perceptible stars twinkle.

Rosy felt the strong solar wind as she began her journey back to the station.

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※ロージーを英名で “Rosy” か”Rosie”で迷うが、本来のバラのような赤い意味を込めてあえて形容詞の “Rosy Space Ship” の “Rosy”を採用。

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