電子書籍:問われるePUBデザイン
今、電子書籍はホットなニュースだ。
その中心的なファイル形式がePUBである。
ePUBはxhtml、CSS、画像などをまとめてzip圧縮したものだ。
単ファイルでの配信やDRMへの対応を考えて一塊にしたのだろう。
しかし、ePUBのレイアウト能力は非常に低いものである。
実際にはCSS2に基本対応なのだから、理屈上はかなり自在なレイアウトが可能な筈だが、リーダーソフトが対応していない。
電子書籍時代の入り口に立った日本でも、ネット上には様々な意見や考えがアップされている。
その中の幾つかは正しく、幾つかは間違っている。(、と私は思っている)
以下に巷でささやかれている意見に対して私なりの考えを簡潔にまとめてみた。
- ePUBで自由なレイアウトはできない。 ○
現在のePUBの仕様とリーダー環境では、自由なレイアウトは不可能だ。(自由とは何か、、という哲学的命題は別として) - ePUBは現在の日本語文章レイアウトに対応していない。 ○
現在のePUBの仕様とリーダー環境では、紙書籍によく見られる日本語文章レイアウトには対応していない。
見た目だけ良いのであれば、縦書きやルビなどもトリッキーなCSSやテーブル組みで可能かも知れないが、あまり勧められない。 - ePUBでは日本語の書籍(雑誌等)は作成できない。 ×
ePUBでは日本語の書籍(雑誌等)は問題無く作成できる。
ただ、今までの紙書籍のレイアウト、表現とは違ったものになるだけだ。
私は日常、縦書きの文章は書かないし、ルビもふらない。
私の話す言葉は縦書きでもないし、ルビもふられていない。 - InDesignでePUBは作れる。 ×
もちろんInDesignでePUB出力は可能だが、満足のいくレイアウトが再現されるわけではない。
InDesignで満足できるePUB出力が可能であれば10年前にWEBページはページレイアウトソフトで作成可能になっていただろう。
InDesignに期待している人の多くは、HTMLやCSSと文章の構造化を理解していないのではないだろうか。
※今後InDesignの基本コンセプトが変化してソースが書き直されれば別の話。しかし、それはもはや別のソフト。 - PDFが良い。 ×
もちろん間違っている。
WEBと現在の情報電子化は人間の情報記録の歴史上、大きな変化点だ。
そのことを理解すれば、W3Cが持つ基本コンセプトや多くの理想主義者の試みからPDFが如何に外れているのかが解る。 - ePUBではデザイナーの力が発揮できない。 ×
もちろん間違いだ。
デザインは制約された環境の上で情報を効率良く伝えることを目的としている。
紙の書籍にも様々な制約があるように、電子書籍にも制約があるだけだ。
これこそデザイナーの腕の見せ所だ。 - ePUBが流行らなくて、アプリやPDFが主流になる可能性がある。 △
もちろん未来のことなんて解らないが、もしそうなれば、関係制作者(デザイナー)と多くの理想主義者の敗北だ。 - ePUB最高! ×
もちろんそんな訳は無い。
単なる通過点だ。