コバルト爆弾

岡君の著書を読んでいて、ふと小学生時代のことを思い出した。
その頃の僕は、いや、僕を含めた他の多くの同世代はアポロの月着陸や万博を目の当たりにして、来るべき21世紀は光り輝く時代だと思っていた。また、輝く光と同じくらいに迫り来る影のようなものも感じていた。

子供向けの科学図鑑を開けば、挿絵には21世紀のお決まりとして、壁掛けテレビ、テレビ電話、エアーカー、原子力飛行機などが華やかに描かれていた。もちろんそこには「インターネット」や「メール」、「携帯電話」などといった地味なものは存在しない。
21世紀初頭には地球軌道上にはスペースコロニー、月には月面基地があるはずだった。 そんな夢のような時代、それらの物とほぼ同じ頃に、いつの間にか記憶の中に刷り込まれていたのが「コバルト爆弾」だ。
もちろんこの爆弾は同世代の者なら説明の必要もないだろう。

知らない人のために説明しておくと、それはたった一発で地球を破壊してしまう悪夢のような最終兵器のことである。鉄腕アトムの兄さんがコバルト兄さんだったので、特に未来的なイメージを持ったものだ。僕自身は地球を半分にしてしまう爆弾だと思っていた。想像力を超えた破壊兵器に、「二つに分かれた地球ででどうやって暮らせば良いのだろう・・・」などと非現実的な心配に頭を悩ませていた。

実際の爆弾は、Wikipediaで調べてみると、
「核爆弾の一種で、原子爆弾又は水素爆弾のまわりをコバルトで包んだもの。……中性子爆弾と共にSFの第三次世界大戦など核戦争による世界破滅するジャンルでよく使用想定されていたが、…」とある。爆発力が大きいというよりは放射能の汚染を目的としたものだったようだ。この頃世界はキューバ危機の発生や飽和状態以上の核兵器により、信じられないくらいの緊張状態にあった。。キューバ危機による世界核戦争の勃発は五分々々だったらしい。
現実の世界には地球上の生物を何度も死滅させることのできるほどの核兵器が今も尚、米露を中心として備蓄されている。
しかし、これらの核兵器が大国によって使われる危険性は少なくなった。現在懸念されているのは個人やテロリスト集団、小国による核兵器の使用だ。南アフリカは核廃棄を宣言したが、北朝鮮やイラン、イスラエル、パキスタンは依然として危険な国々だ。もちろん地球上で唯一核兵器を使用したアメリカも限定的な使用では信用できない国の一つだ。
日本にとっての当面の敵対国は北朝鮮だ。彼らの持つ核兵器が日本に落とされたとしても、日本が焦土と化すことは無いが、それでも数万人レベルの死者が出るかもしれない。
地球を破壊するコバルト爆弾の危機は去ったが、日本への核攻撃の危険性は広島と長崎以来、最も高まっているのかもしれない。

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