振幅が急激に小さくなること=フラット化=コスモス

インターネットを使いはじめた13年ほど前から少しずつ感じていたことがあった。

それは社会に存在する情報のブレ(振幅)が特定のテーマーに対して急激に小さくなる現象だ。
特定のテーマは何でも良いが、最も理解し易いものに価格がある。

明確なイメージを持ったのは1998年頃だった。

インターネット上でSHOPをはじめたのが直接の原因だった。私が始めたのは介護用品の販売サイトで、日本国内でも1200以上の商品を揃える最初の大型介護用品サイトだった。
商品は商社やメーカーと契約し、注文が入れば、直接発送してもらう。在庫ゼロのリスクゼロだ。少し後には注文商品を一旦仕入れてから、お客さんに発送する方法から、商社やメーカーに直接発送してもらう方式になり、ドロップショップの先駆けのようなビジネスになっていた。
このサイトは随分と雑誌や書籍に取り上げられ、ニュース番組の取材を受けたり、様々な会社の協業や融資のオファーや受けたりと忙しかった。
(まぁ、第一次インターネットバブルだったので。。)

ショッピングカートシステムは国内で楽天が運営を始めた年であったが、楽天のシステムに不満があったために、米国のフリーウェアを独自に翻訳、国内向けにカスタマイズしたものを使っていた。
1999年?2000年頃になると会社内にサーバーを設置しデータベースから直接ページを書き出すシステムを開発した。顧客管理や、伝票管理を一元化するためにFileMakerによるショッピングサイトの運営だ。(その後FileMakerサーバーは更なる改良を重ねて、Windows&Accessによるサーバーへと変化する。)

FileMakerサーバーの時に、既に価格競争が激化してきた事を感じ、また、商材が介護用用品であることを考えて、ショッピングカートに類似商品をその場で検索できる検索フォームを設置した。(簡単なマッシュアップだ。)
つまり、お客さんが商品を買おうと思っていると、カートで他のSHOPが販売しているページや使い方が検索できるようにしたのだ。
「そんなことをすると自分ところが売れなくなるじゃないか」と、言われるかも知れないが、私自身は販売に関して既に諦めかけていた。
それはサイトがメジャーになる一方で売り上げは比例して上がらず、経費は増大していたからだ。
それとインターネット上では安いものを探し出すことは非常に簡単だ。私の会社はメーカーではない。また、大手の商社のように大量に商品をストックすることはできないために価格競争に巻き込まれると負けることは目に見えていた。
それならば、情報ポータルとして間口を広げる方が生き残りの可能性もあるだろうと考えたのだ。
これがインターネット上に存在する情報(テーマ)に関して「振幅が急激に小さくなる」現象を強く感じた最初の時だ。
ポジティブな側面ではインターネットがコモンズである限り、世界中は民主化する。
ネガティブな側面は、全ての自由主義的な経済活動が成立しなくなる可能性を秘めている。情報が優先し、実社会は民主的で社会主義的な社会へと次第に変化する。

つまり、今日までの自由経済競争社会の発展は社会の情報の「ゆらぎ」を前提としていた。
物理的に言えば宇宙はビッグバン(カオス)からコスモスへの道を辿っている。
エントロピーは増大の方向へ、高きから低き場所へ、気圧は高から低へ、人はポテンシャルの高い場所よりも低い場所よを好む。全ては安定化と低運動へと向かう。 今まで、情報においては、個々の人間の情報伝達手段が限られ、速度も遅かったために、情報の振幅はフラット化できなかった。別の言い方をすれば、個人の寿命よりも情報の振幅スパンが長かったのだ。だから歴史上何度もバブルが起こる。いつまでたってもねずみ講やおれおれ詐欺に騙される人が出る。(新種のねずみ講はインターネットの情報共有を利用したものもあるが、)
今ではインターネットの情報共有とそのスピードが思考速度に近づいたために、社会に存在する情報は急激にフラット化している。

私自身はこの現象に関してで「振幅が急激に小さくなる」と表現していたが、2005年に出版されたトーマス・フリードマンの「フラット化する世界」のタイトルを見たときに、これだ! と思った。
自分自身が探していた概念は「フラット化」だったんだと理解したのだ。
インターネットのイノベーションを表現した言葉として「web2.0」が騒がれ、web2.0を利用した情報形成の場として「ウィキノミクス」が存在し、その結果が世界の「フラット化」だ。

ただ、残念なことに多くの経済人や企業経営者は「web2.0」、「ウィキノミクス」、「フラット化」をビジネスとしての側面、ビジネスにどのような影響を与えるかしか考えていない。
特に「フラット化」という言葉が、そのイメージから社会の均質化のみをイメージする場合は注意が必要である。私自身もこの本は読んでいないので、「フラット化」という言葉が何を意味する言葉なのか正確に知らないが、私のとらえ方としては「単一思考社会」といったイメージに近い。
本当に重要なことは人々が同じ情報に瞬時にアクセスことによって実現する「単一情報共有の社会」が経済も含め人間にとってどのような社会なのかを深く考える必要があるのだ。

日本第二の鎖国時代につづく

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